宇多田ヒカル「Fantôme」

宇多田ヒカル「Fantôme」
宇多田ヒカルの8年ぶりのフルアルバム。
彼女については特別ファンと言えるような感情を抱いたことはこれまでなかったのですが、今作は待ちに待ったアルバムという思いが不思議と込み上げてきました。ちょうど彼女がデビューした90年代後半から2000年代は、私自身の多感な時期とも重なっており、メジャーシーンで流れるJ-POPを一番耳にしていた頃でもありました。そういう経緯もあってか、もはや彼女の音楽は空気や水のような存在となっており、どこかで潜在的に欲していた部分があったのかもしれません。
今作を聴いた印象について。サウンド的には、配信曲もコラボ曲にも派手さや斬新さはあまり見受けられず、むしろ地味に聞こえました。しかし、冒頭の1フレーズから一気に引き込まれるような秀逸なメロディーラインは健在。低音ボーカルにぞくぞくさせられました。配信曲3つの存在感のある配置もグッド。活動休止期間中に積んだ人生経験が色濃く反映された日本語詞も素晴らしいです。これまで表現されたことのないような死生観が多く含まれておりながら、重さを感じさせない。むしろ癒しや優しさを感じます。活力を与えてくれるというより、生きているという実感を与えてくれます。天才、神童と言われるような人でも良い意味で人の子なんだなと思ったのと同時に、届きそうで届かない深遠で孤高な存在になりつつあるとも思わせる作品でした。
★★★★★
エヴァ新作はよ
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