2013年年間個人的アルバムランキング
2013年最後の更新は、年間アルバムマイベスト40を紹介します。
作品のリリースの対象期間は2013年1月~11月まで。ベスト盤、カバー盤は対象外にしておきます。
では一挙にどうぞ。
作品のリリースの対象期間は2013年1月~11月まで。ベスト盤、カバー盤は対象外にしておきます。
では一挙にどうぞ。
supercell「ZIGAEXPERIENTIA」

supercell「ZIGAEXPERIENTIA」
コンポーザーのryoを中心にしたクリエーター集団、supercellの3rd。
2年半ぶりのオリジナルアルバム。こゑだが新しいボーカルとして参加してからの楽曲が収録されています。
イントロとして静かに幕を開ける「Journey's End」。早くもセンチメンタルな響きが。
「No.525300887039」は深い海へ沈んでいくSEに始まり、ダウナーな雰囲気で"総背番号制"という明るくない未来を描く。こんな曲書けるのかといきなり不意を突かれた気分。
「Mr.Downer」はアグレッシブなロックサウンドにストリングスを織り交ぜたアレンジに、葛藤やもがきを感じる歌詞。小南泰葉とか好きな人に受けそうな感じ。
「My Dearest」は新ボーカルになってからの初シングル曲。彼らの真骨頂というべきピアノ、ストリングスの存在感のある煌びやかなバンドアレンジ。ボーカルにもっと迫力が欲しい感じがしたが、彼女も2年でだいぶ成長したのではと周りの曲を聴いて思う。
「従属人間」はRADWIMPSを通過したような最もVOCALOID感が出ているテンポの速いロック曲。煽りっぽい歌詞はあまり興味が湧かないがサウンド的にはごちゃごちゃしていて好き。
「ホワイト製薬」もどう考えても一筋縄ではいかないタイトルの曲だが、中身もシニカルに現代社会を切ってみせようという意気込みが感じられるロック。姿勢は悪くない。
「拍手喝采歌合」はアニソン・ゲーソン寄りの和風ロック王道一直線な曲。好きなんだけど、フレーズの節々で既存曲をなぞり過ぎたきらいがあるのが、ちょっともったいない。いろいろと似過ぎている。
「Yeah Oh Ahhh Oh!」はパンキッシュなノリで、くだけた歌詞にくだけたボーカルがなかなかマッチしている。
「百回目のキス」は大人しめだがロック路線は維持している。内容が内容だけに全く別のアレンジでしっとり仕上げてもものになりそうだなと思った。
「銀色飛行船」は7分あるバラード。J-POP王道スタイルでなんだか懐かしいとすら思った。タイトルが気になりはするが、何のことはない。純粋な恋愛曲だ。
「The Bravery」は弱い主人公が強い相手に勇気を振り絞って戦いを挑む冒険アニメの主題歌っぽいなと思って聴いていたが、実際にアニメ提供曲だったのか。こういうの全然気にせず聴いているからなあ。純度100%のストレートなアッパー曲。
「僕らのあしあと」はシングル曲のはずだが当時聴いた記憶がない。いきものがかり的な生真面目さのある"歩いてく"ソング。心なしかメロディーもそれっぽい。
「告白」は疾走感のあるピアノロックぶりがやっぱり良いなあ。サビへ向かって勢いづく展開とか予定調和な部分にワクワクさせられる。それにしても"僕"が似合うボーカルだね。
「時間列車」は個人的に今作後半のピーク。4つ打ちで音がワーと入ってくる派手な展開が良いね。"列車"の走り続ける様が上手く表されている。
「We're Still Here」はピアノオンリーのラスト曲。なんとなくこれもいきものがかりチック。
J-POPのど真ん中に割って入ったVOCALOID界の急先鋒の新しい一面を聴くことができた作品。個人的な着目点としてはただ一点―『なぎロス』を解消できたかどうか。nagi(やなぎなぎ)ボーカル時代の瑞々しい青春のきらめきを中心に描いた前作「Today Is A Beautiful Day」に対し、今作はロックアレンジな曲が特に目立っていた印象。ボーカルの声質に対する適材適所という意味では良い方面に向かったと思います。ロックなんだけどJ-POPの範疇でやっている収まりの良さが最近の邦ロックシーンともマッチしていますし。正直、ボーカル代わってからはあまり興味を持てず、あまりにもnagiさんへの愛着があり過ぎたのでハードルを上げた状態で聴いたわけですが、質の高さは維持しているようで安心しました。こゑださんについては、想像していたより繊細な歌い方をする人なんだという印象。歌い分けはnagiさんより幅広いかもね。nagiさんのボーカルが『透明』だとしたら、彼女は『白』かな。(意味が分からん)
構成としては、前半がジャケットと親和性の高いダークロックな流れに勢いがあって良かった。後半はシングル曲でだいぶもっさりしていた印象。ここの並びはいずれもあと一歩でさらに評価上げられそうな出来で惜しいなあという感じ。案外アルバム曲の方でおっと思わせるものが多かった気がする。『明暗』で分けたのだろうか、B面を聴いた後にA面がやってくるような感覚だった。歌詞は、ボカロ文化の一つの特徴である漢字カナ交じりのゴテゴテしたセンテンス…ではなく割りとシンプルに文章を綴っているのは相変わらず。社会的なメッセージ性を含めたり、崩して書いている曲もあるんだけど、全体的に真面目さが滲み出ているなと。オリジナルアルバムを出すごとに一つの区切りをつけてきた彼らですが、クリエーター集団として音楽以外の面も含めてあっと驚かせる作品作りに今後も挑戦していって欲しいですね。
★★★★☆
この数字の意味は?
禁断の多数決「アラビアの禁断の多数決」

禁断の多数決「アラビアの禁断の多数決」
富山出身のメンバーが多い男女6人組音楽集団、禁断の多数決の2nd。
前3作のお手軽感想はこちら。知れば知るほど謎が深まるばかりです。
「魔法に呼ばれて」はゆったりと気持ちの良い朝を迎えたような雰囲気のデュエット曲。言葉の一つ一つをかいつまんで聴くと何言っているのかまるで分からない歌詞だが、このゆったり感でまずは癒される。
「トゥナイト、トゥナイト」は彼らの代表曲「透明感」に通じるポップナンバー。可愛らしい女性ボーカルに心地よいアレンジ。構成はシンプルなんだけど、音作りのきめ細やかさが抜群。
「真夏のボーイフレンド」も前曲と雰囲気が似ているポップ曲。ここまではかなりさくさく聴ける。
「今夜はブギウギナイト」はエフェクトのかかった機械的な男性ボーカルメイン(合いの手程度に女性ボーカルも)でややゆったりしたテンポで進行する曲。懐かしい感じがあって洒落てるな。この男性ボーカルクセが強いんだけど加工されていたら安心して聴ける(笑)
「リング・ア・ベル」も消え入りそうな声の女性ボーカルで上品に落ち着きのある夏のひと時を描いている。秋発売なのに夏仕様なんだよね今作。
「ココアムステルダム」では可愛らしいエレクトロポップ再び。なのだが女子に何歌わせてんだよ的な歌詞がいきなりぶっこまれる。
「くるくるスピン大会」はどこで催されているのかは知らないが、とにかくスピンしまくるノリの良い曲。"回転ナウ 回転ナウ 右から回転だ くるくる let's go くるくる let's go"。だいたいこんな詞です。
「踊れや踊れ」は和風で祭囃子のようなサウンドに気持ち悪い男性ボーカルが入る。これが実にキモい(笑)でもなにか神聖な儀式の始まりみたいなそんな雰囲気がある。邪教っぽくてあんまり近寄りたくないが。7分もある大曲。何はともあれ和楽器の音色は良い。
「勝手にマハラジャ」は表題曲扱いということでよいのか。確かに熱帯夜の酒池肉林ぶりが全面に出ている。輪にかけて勢い任せの詞ではあるが"御代もぐびぐび高アルコールタイム"っていうところが好き。
「Crazy」はスローテンポに日本語なのに英語に聴こえるような語感の良い言葉が並んだ詞が特徴的。子どもっぽい面と大人っぽい面が共存していて揺さぶられる。
「フライデイ・ナッツ」も質は高いのだがあまり印象に残ってないなあ。ミドルテンポで安定した作りだけど。
「渚をスローモーションで走るも夢の中」はアフリカンなパーカッションがひしめき合う彼ららしい曲。そしてさっきから良いことをあまり書いていないほおのき氏のボーカル再び。歌詞を見ながら聴いても何言っているか全く分からん(笑)早口セリフパートも。後半は後半で艶めかしい女性ボーカルがメインになって妙に惹かれるんだよな。
「バンクーバー」は緩めのラップ調の曲。おー新機軸。"バンクーバー"と気怠く歌っているがこれと言って意味を成していないような。"激辛ラーメン 中本フィーバー"とか歌詞にするか!?
「アイヌランド」はかの名曲「リバーダンス」を彷彿とさせるアイリッシュダンスのようなサウンドが魅力の曲。冒頭はどう転ぶか全く分からない展開なのだが、聴き進めていくとまさにケルトの王道を突き進む素晴らしい出来で驚いた。アイ"ル"ランドならぬアイ"ヌ"ランドというタイトルだけあって、歌詞もアイヌ語(?)なのか。3分過ぎたあたりからはインストのみになりBeltaineっぽかった。
無尽蔵の音楽性を秘めた謎集団。バックグラウンドが広範過ぎて説明が上手くできません。こんなレビュー読まないでさっさと聴いた方が早いです。今作はこれまでに比べてポップ度が上がった印象が強いですね。女性ボーカルメインの曲の割合が増え、カオスで訳の分からない曲が減ったのが要因でしょうか。女性ボーカルのゆるふわでシュールな雰囲気は、出てきた当初から『相対性理論的な確信犯ぶり』と評されていたと思いますが、やはり相対性理論を軽く凌駕する音楽性の幅広さが最強の武器でしょうね。和風、アフリカン、アイリッシュといった民族音楽系、現代的なエレクトロポップ、懐かしのシティポップ等々、一枚でこんなに多様な音が入り混じるアルバムもそうそうないのでは。歌詞もよく見ると地名を含んだものが多く音楽性のワールドワイドぶりと上手くリンクさせていますね。「トゥナイト、トゥナイト」に代表されるような割りと好きなタイプのポップ曲が増えたのは良かったが、やや被り気味になっていて逆に全く違う雰囲気の曲に助けられた印象も。多分玄人受けという点でいえば過去作の方が評価高いんじゃないかとも思ったが、まあ自分は素人なので気にしないし、今作が一番好きかも。非日常的でアバンギャルドでちょっと甘~い音楽体験をしたい方におススメ。
★★★★
R-18版も実はある。ここには貼らないので成人の方は自分で探してね。