Sound Horizon「ハロウィンと夜の物語」

Sound Horizon「ハロウィンと夜の物語」
サウンドクリエーターRevoが率いる幻想楽団、Sound Horizonの4thシングル。
当ブログはアルバムレビュー中心のブログですが、初のシングルレビューですね。サンホラーの端くれとしてはレビューせざるを得ない!
「星の綺麗な夜」は10分半という長尺で、リンホラから流れてきた人をふるいにかけるかの如くサンホラワールドを詰め込みまくった曲。メドレーのように次々とメロディーと情景描写が変化する展開は圧巻。これでもかというくらい良質なメロディーを余すことなく詰めている。妙にクサくて熱い展開になったと思いきや、コミカルな描写になったり、哀愁を漂わせたりと忙しい。私は歌詞考察をほとんどしない派なので、詞の内容については深いことは書かないが、普段ならJimangが請け負うような役(失礼)をRevo自身が一貫して演じているような雰囲気。個人的には歌であまり前に出て欲しくない閣下の歌唱だが、だいぶ良くはなっている。多分いつまでもこういう評価しかしないだろうけど。
「朝までハロウィン」はサンホラの曲とは思えないくらい可愛い。なんだこの可愛さは。"せぇ~の"の破壊力が凄まじい。しかしメロディーは思い切りRevo節。登場人物が何人いるのか把握しきれないくらいセリフが飛び交うが、細かいことは気にしなくても十分楽しめる。超初心者向け。
「おやすみレニー」は木村花代がメインボーカルの8分強の曲。歌上手いなこの人。元劇団四季ってえらくガチな人選をしてきたものだ。サンホラは魅力的な女性ボーカルが続々と輩出されるのが売りだよね。
西洋文化をモチーフにした楽曲を中心とする彼が意外にもまだやっていなかったテーマがハロウィン。日本でもクリスマス、バレンタインデーに続くイベントとして根付きつつありますが、今作はサンホラ史上最もピースフルな作品だと思います。Linked Horizonのタイアップ効果による人気拡大もあってか、新規リスナーをさらに取り込もうとハードルが低い作品を用意したようにも思える。元々Revoのワンマンプロジェクトではあるが、リンホラを経て輪にかけてその度合いを強めたような気がする。卓越したメロディーセンスはやはり目を見張るものがあり安心して聴け、歌唱もだいぶ板についてきた印象。次作とリンクするシングルなのか、全く別の世界を描くアルバムを持ってくるのか、個人的名盤量産アーティストなだけに今後の動向にも注目していきたいです。
★★★★
可愛過ぎるよ
惑星アブノーマル「アナタソナタ」

惑星アブノーマル「アナタソナタ」
アレックスたねことテナ・オンディーヌの女性2人組ユニット、惑星アブノーマルの2ndミニ。
衝撃的な幕開けとなった前作のレビューはこちら。どういう作風で次は来るだろうかと思っていたら、ポップ度がより高くなっていましたね。
「階段コンチェルト」はピアノとパーカッションが激しく入り混じる曲。テーマは割りとしっとりした恋愛もので、ボーカルも勢いはあるが終盤は悲しみの色が強くなっていく。
「流星」もパーカッションの存在感が凄いノリの良い曲だが、やっぱりどことなくしっとり感が。"~良いのに"と後引く感じのシンプルな詞ですね。
「愛してやまない」はリード曲。品のあるピアノアレンジが素敵。この曲に限った話ではないが、節回しが独特だよね。歌おうと思っても歌えない。なんか未練がましいなあ今回の歌詞は。
「そうならいいのにな」はピアノとパーカッションが抑えめの切ない曲。間髪無い言葉の繋ぎ方がこれまた珍しい。
「臆病者ラプソディー」はバイオリンの物悲しいイントロと間奏が印象的。短い曲だけど哀愁あるメロディーに非常に惹かれるものがあるね。
「アレルギー」はいきなり"痒い"を連発する激しめロックアレンジ。前作の作風に近い痛快さ。変拍子ぶりが心地よい。
「ユキコ」は前曲からすかさず始まるこれまたロックな曲。ここの流れは勢いがあって好きだなあ。今作では少数派のファンタジックなテーマですね。中盤から終盤にかけての展開は「月夜海水浴」を彷彿とさせる。
「優しい世界」は波の音を取り入れたミディアム寄りな曲。"優しい世界が在るなら 今すぐそちらにワープさせて"と歌い上げる。
約30分。どこを切ってもキャッチーの一言。前作のおどろおどろしい雰囲気は薄れ、真人間になりつつある(とは言え彼女らは別の惑星人
★★★★☆
なんすか、この寸劇は。たねこ可愛い。
の子「神聖かまってちゃん」

の子「神聖かまってちゃん」
男女4人組ロックバンド神聖かまってちゃんのボーカル、の子のソロ1st。
神聖かまってちゃんの楽曲も多く収録されているセルフカバー集となっています。
各曲レビューをすっ飛ばしていきなりまとめに入りますが、選曲としてはほぼベスト盤と呼んでも遜色ない内容。代表曲「ロックンロールは鳴り止まないっ」、「23才の夏休み」、「美ちなる方へ」等は当然のことながら、オリジナルアルバム未収録のアニメ提供曲「Os-宇宙人」やシングル曲「夕方のピアノ」も今回初めてアルバムに収録されています。
肝心の楽曲については、これまでの宅録のローファイで粗さのある雰囲気が払拭されて非常に洗練を遂げている印象が強い。録音環境に関しては、これまでも良くなる方向に変遷しているわけだが。演奏陣もソロ名義ということでボーカル以外はオリジナルとは異なり非常に手堅い演奏が聴ける。アレンジに関してはそこまで大胆な変貌を遂げている曲はなく、原曲に至って忠実と言ったほうが当てはまる。初期のファンは宅録時代の音源が良かったと言う人もいるくらいなので、ここまで洗練され過ぎているとオリジナルバンドとしての良さをあえて削ってしまったようにも見えるが、彼はどのような意図をもってソロ活動を始めたのだろう。
そんな疑問も湧いてしまうのだが、曲そのものはやはり好きなものが多い。端的に言えば、狂気と凶暴性を帯びながら、美しくも儚い世界の演出が上手い。何かとキ○ガイじみた言動で話題を集めようとする人であるが、過ぎ去りし青春のような淡い哀愁の引き出し方が秀逸で実はやればできる人だと思っている。特に鍵盤の奏でるフレーズは久石譲の継承者かと思うくらい切なさが滲み出ている。個人的には「ベイビーレイニーデイリー」や「おっさんの夢」が好き。割りと画一したフレーズを使い回しているけど、一発響くものがあれば連鎖的にハマる要素はあるでしょう。
というわけで今作は何が飛び出すか分からないとされたソロ一作目ではあるのですが、かまってちゃん関連のアルバムの中でも極めて無難な内容です。なんか若干の肩すかしを食らったような、バンドを離れて内弁慶で大人しくなった感じもしたが…。まあ、彼らのアルバムを聴いていない方には入門編として最適な一作でしょう。
★★★★☆
今作収録のものはもっと聴きやすいです。