hawaiibem's music blog

気になる邦楽アルバムを中心に音楽レビューをしていました。

 

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やくしまるえつこ「RADIO ONSEN EUTOPIA」 

RADIO ONSEN EUTOPIA
やくしまるえつこ「RADIO ONSEN EUTOPIA」
相対性理論のボーカル、やくしまるえつこのソロ名義としては初のフルアルバム。
ソロ活動開始から3年半を経て待ちに待ったアルバムがやってきました。昨年のクリスマスにオンエアされたNHK-FMの番組でセッションした楽曲+αを収録しています。収録曲はこれまでリリースしたシングル曲に加え、自身も楽曲提供した「NHKみんなのうた」から過去の名曲のカバーも含まれています。私も一人寂しく当時この放送を聴いており、なんとクオリティーの高いスタジオセッションだろうと充実した1時間を過ごしたのを覚えていますが、これがまさか事実上の1stフルになるとは。

楽曲の内訳はシングルから7曲、みんなのうたから5曲。個人的には「おやすみパラドックス」や「ルル」も聴きたかったが、それだとベスト盤に限りなく近くなってしまいますからね。多分「ルル」に至ってはタイトルがNHK的にグレーだったのかも。みんなのうたの絵本的な世界観とまるえつのシュール可愛いな世界観は見事にマッチしていましたね。全編みんなのうたのカバーアルバムを出してもおかしくない。そういう意味では選曲が中途半端で新曲も欲しかったなあとも思いましたが、そんな不満も吹き飛ばすくらいアルバムの完成度は高いです。スタジオ録りという一風変わった空気が作品にいい緊張感を与え、高い演奏技術に裏打ちされた緻密さとライブの"生"な感じが渾然一体となった傑作です。

1曲目の「ノルニル」はオリジナルではオーケストラアレンジで、スタジオセッションのため音数は減らされていますが、魅力は不変。彼女の曲の中では珍しくユルさよりも緊迫感にウェイトがある曲ではないかと思います。ほかの曲以上に必死で歌っているような感じもなんか良い。中盤"ランラランラ~"とナウシカレクイエムみたいなのが入るなど、7分超えの大作ながら全く飽きる要素がない曲展開。谷山浩子の「恋するニワトリ」。超俺得。もうこれはニヤニヤせざるを得ない組み合わせ。まるえつも多分谷山さんの影響を受けているはずなので相性はやっぱりよいと思います。純粋に可愛い。「ヴィーナスとジーザス」、「COSMOS vs ALIEN」と荒川アニメOPが連発。この2曲は語感が凄まじく心地よい。「COSMOS vs ALIEN」は放送では流れなかった曲でしたが、アウトロで思いっ切り深遠な雰囲気を醸し出して変化をつけてきましたね。超有名曲「北風小僧の寒太郎」の伴奏は大友良英のギターのみというシンプルなアレンジ。"ルンルンルン"が可愛いです。あざと過ぎます。「ヤミヤミ」は本家みんなのうたにも採用された曲。どう考えても谷山浩子です。本当にありがとうございました。得たいの知れないちょっぴりホラーな感じは名曲「まっくら森の歌」などを彷彿とさせます。終盤の演奏が急にカオスチックになる演出が憎らしい(笑)「少年よ我に帰れ」も元々オーケストラ形態の曲で、4分くらいからの展開が好きです。フルートの音色にも癒されます。「キャベツUFO」と「ラジャ・マハラジャー」はこれまで原曲を知らなかった曲。「キャベツUFO」はウィスパー度MAX。よくよく聴くと変な歌詞だなあ。土岐麻子もカバーしてたんだ。「ラジャ・マハラジャー」は原曲は戸川純が歌ってたのか。アバンギャルドさに関してはNHKは今も昔もすごいと思います。トリビアでも有名な「ニャホニャホタマクロー」の歌の原曲でもあることも今更知りました。「ときめきハッカー」はインターネット時代の現代的な言葉選びにダンサンブルなサウンド。またしても最後があざとい。卑怯です(笑)大貫妙子の「メトロポリタン美術館」。これもさりげなく怖いことが起こっている名曲。メルヘンとホラーは紙一重なのです。最後の「ロンリープラネット」は9分越えの大作。今作のタイトルであるラジオ、交信がテーマとなっています。宇宙規模のスケール感、ふっと湧いて出てくる庶民感覚、理系っぽいアカデミックさ等々が凝縮された怪曲。まるえつ恐ろしい子。

音楽と最先端テクノロジーの融合という現代音楽的な新たな芸術に挑戦し続けている彼女。楽曲そのものはオーソドックスなJ-POPやアニソンの類とあまり変わりはないかもしれません。ただのコミックソングとして捉えるか、深遠な意味を持つアートと見るかでだいぶ印象が変わってきます。多くの"大人たち"が彼女のそうした不思議な魅力に吸い寄せられており、それによって彼女自身の格もより上がっているように思います。もともと才能があるのは認めますが、人脈形成においてもかなりの策士ではないかと思ってしまいますね。相対性理論として新風を巻き起こして早5年。新体制となって初となるアルバムもリリースされることが先日発表されました。個人的には真部×まるえつあっての理論かと思っているだけに、そこを払拭できるか大いに期待しています。

★★★★★






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