hawaiibem's music blog

気になる邦楽アルバムを中心に音楽レビューをしていました。

 

柴田淳「あなたと見た夢 君のいない朝」 

あなたと見た夢 君のいない朝
柴田淳「あなたと見た夢 君のいない朝」
今年で活動13年目となる女性シンガーソングライター、柴田淳の9th。
デビュー10周年記念の前作「僕たちの未来」はバリエーション豊富な良盤でした。昨年リリースの70年代ヒット曲のカバーアルバム「COVER 70's」は彼女の知名度をさらに押し上げた作品となり、カバーアルバムをほとんど聴かない半ば聴かず嫌いな私としても非常に良い出来だったと思います。そして今作、ポップであるがダークなしばじゅんワールドは健在しております。

個人的お気に入りは1,2,3,8,9曲目。特に序盤3曲の流れがすごい。最初聴いた時とてつもない名盤を出してきたと興奮しました。1曲目の「ノマド」はフォルクローレ的な異国風の古き良き日本の歌謡曲を思わせる曲。"ノマド"とは"遊牧民"の意味で最近別の用法で流行語になりつつありますね。リード曲「あなたの手」は美しくも切ないバラード。ダークさが際立つロックテイストの「雲海」も大好きです。ピアノとチェロのシンプルな構成で上品なボーカルが堪能できる「恋人よ」。どこかで聴いたことのある懐かしい雰囲気の「冷めたスープ」はタイトル通り冷淡な詞。NGワード"女ってコワイ"。今作中最も軽快なポップアレンジだが歌詞が暗黒の「嘘」。ピアノ伴奏のみで穏やかな雰囲気の「朝靄」。中盤も派手さはないが抉るような詞の応酬がエグい。「魔女の話」は曲の冒頭から鳥肌が立ってしょうがなかった。深みにはまると抜け出せない怖さがあるぞ今回。「道」もグッとくるメロディーだが、詞は運命として受け入れよの一点張りの救いようのなさ。「それでも来た道」のリメイクみたいになってる。最後の「キャッチボール」はもう弱っているところにさらにとどめを刺すような一曲。これで終わるとかマジか…

作曲に関しては前作から思っていましたが、懐かしの歌謡曲の影響が濃くなっているような気がします。カバーアルバムの制作もあったので、影響を受けざるを得ないとは思いますがやや既聴感があるところがチラホラ。あとは昔に比べて高音が多い、というか全体に声が高くなっていますね。作詞については本人曰くリアル志向で、従来より端的な言葉選びをしている節があります。直球で突き刺さるような詞もあり、音楽を含めある意味分かりやすくなったのでは。表面的に明るい曲もあるが、"別れ"主体の基本的にネガな詞で満ち満ちています。カバーアルバムから入った人がどう感じるのかは気になるところではありますが、哀愁ある昭和歌謡の雰囲気を残しているのでぜひオリジナルの方も聴いてもらいたいものです。

(余談)しばじゅんは歌っている時以外の素の部分が恐ろしく可愛いのはファンの方ならご存知でしょう。ナタリーの初インタビュー記事(リンク)も掲載されましたが、もろに素を出したインタビューになっていて面白いです。いきなり「知名度がなさすぎる」とかぶっちゃけすぎ。あとワンオクとか聴くんですね。それにしてももう30代後半なんですよね。やっぱり魔女なんじゃないかと(笑)しかし反則すぎるな、この通常版ジャケットの薄幸美人ぶりは。

★★★★☆




ぶいちゃんかわいい。


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category: アルバムレビュー

坂本真綾「シンガーソングライター」 

シンガーソングライター【初回限定盤】
坂本真綾「シンガーソングライター」
音楽活動は今年で17年目に突入した声優、坂本真綾の8thフル。
昨今の声優歌手では水樹奈々に並ぶ存在としてコンスタントに活動を続けるマーヤさん。今作のコンセプトはアルバムタイトル通り全曲の作詞作曲:坂本真綾であること、これ一本に尽きると思います。これまで菅野よう子を筆頭に様々なポップスの匠たちの音楽を享受してきた彼女にとって、新たな挑戦であり、音楽に真摯に向き合う姿勢を改めて感じ取ることができる一作です。

澄み切ったコーラスで心地よい幕開けの「遠く」。彼女の歌詞って割りと抽象的でつかみづらいのもあって、国語が苦手な私としては良し悪し付け辛い。とりあえず"遠く"と伸びやかに歌っている彼女の声は素敵です。次の「サンシャイン」もサビはシンプルに「遠く」と似た雰囲気の爽やかな曲。以前のアルバムにも収録されている「everywhere」と「誓い」はクオリティーが高いが今作に改めて入れてこなくてもとはちょっと思いました。「二コラ」からの中盤の流れはなかなか良いですね。アコースティックで温もりのある「二コラ」はアレンジの妙もあって完成度が高い。「Ask.」は高音パートを存分に聴ける今作のピーク。よく読むと結構投げやりにも見える歌詞ですが(笑)「なりたい」は明るめなアッパー。この辺は手堅く無難ですね。ちょっと菅野よう子を意識したんじゃないかと思う出来栄えの「カミナリ」。一番ひねりがあって面白いなと感じました。「僕の半分」はこれまた歌詞が分かり辛い。スローな入りから不意に来るBメロとサビ。ゆったりした長めの曲なので既にラストの雰囲気なんですが、あともう一曲。最後の表題曲「シンガーソングライター」はいわゆる音楽がテーマの音楽。これは単純に喜怒哀楽の楽だけを取り出したピースフルな大団円。終盤の転調も待ってましたと言わんばかりに効果的に入っていて良いですね。

アルバム全体としては穏やかでまとまりのある印象。これまでの作品に見受けられた、単体では良曲だが流れにはそぐわないアニメタイアップ曲や制作者がバラバラであることから感じる微妙な違和感は全くないです。楽曲の雰囲気としては菅野よう子から離れた「夕凪LOOP」以降に近いですが、全体のまとまり方は「Lucy」等の菅野プロデュース時代の作品も想起します。このあたりはいい具合にいろんなところからの影響を受けていると言ってよさそうです。曲の作り手が自分自身になってもなお、これまでの歌手・坂本真綾のイメージを崩すことなくすんなり受け入れることができました。ただ、初の試みにしては優等生を貫き過ぎているかなとも思います。なんか既に完成形を持ってこられた感じ。もうちょっと試行錯誤あってラフな形をあえて残したり、作曲を通じて新たな一面が垣間見えるような冒険があっても良かったかなと個人的には思います。ある意味難しい注文をつけてしまいましたが、今後の制作活動にも期待しています。

★★★★☆




category: アルバムレビュー

凛として時雨「i'mperfect」 

i'mperfect
凛として時雨「i'mperfect」
2002年に埼玉で結成された男女ツインボーカルの3人組ロックバンド、凛として時雨の5th。
バンドとしては2年半ぶりの新作。前作の「still a Sigure virgin?」では新しい一面を見せた緊張と緩和の入り混じった名盤でした。続くTKのソロ作「flowering」はストリングスアレンジとTKの楽曲が抜群の相性を見せた傑作で当ブログでは昨年度1位に挙げました。そして今作も全曲キラーチューンと呼ぶに相応しいアルバムで怒涛の変態ぶりもとい快進撃が続いております。

タイトルの「i'mperfect」は"不完全"の「imperfect」と"私は完璧である"の「I'm perfect」の二つの意味を持つことは容易に想像ができます。不完全でありながら完璧とはいかに。初めは自信があることを示唆しているのかと思っていましたがどうやら違うみたいです。どちらかと言うとその逆というか、自分らが不完全に思うものも人にはパーフェクトに見られたりすることが由来の一つになっているようです。
余談ですが、少し前に「i'mpossible」というダブルミーニングのフレーズを使っているCMがありましたよね。着想そのものはこれと同じものかと思います。この時は"possible"という単語の使い方が一般的ではなくて、この用法こそ"impossible"じゃないかとツッコんだものです。まあどうでもいいのですが。

全体的にはアニメタイアップの「abnormalize」の勢いに引っ張られるように激しいテイストの曲が並んでいます。特に前半は1曲目の「Beautiful Circus」から息つく暇もないフルスロットルぶり。「Metamorphose」、「Filmsick Mystery」あたりは面白いリズム。「Filmsick Mystery」は345パートのメロディーが特に好み。「Sitai miss me」で一旦落ち着くのかと思いきやそんなことはなかった。今作でもなかなかの変則ぶり。「make up syndrome」はシングルカップリング曲。英語の歌詞がこれまでの総ざらい的になっているような。「MONSTER」は今作で一番好きかも。サビの2人の掛け合いが特にノレる。"完成系の偽物"とかはアルバムタイトルとリンクしてるのでしょうか。終盤の345の"I have a MONSTER"がやはりイイ。345マンセーです。すみません。「キミトオク」は今作で最もおとなしい曲。ここでは"偽物の完成形"が登場。「MONSTER」から繋がりがあるようです。ラストの「Missing ling」はクライマックスらしい盛り上がりを3分半過ぎてから見せてくれます。鋭利だが脆く儚い時雨らしい表現が詰まった終盤の畳み掛けは圧巻。

歌詞について、語彙もかねてから使っている言葉や日本語として怪しいのも多々見られるのも平常運転。具体的に言えば、"夕景"、"~チック"だとか"透明てる"や"ヒミツメキ"等々。後者については狙ってやっているんでしょうけどまさかのツッコミ待ち?個性を出すのに同じ言葉がオーバーラップすること自体は悪くないですし、一番にTKがこれらの言葉そのものが好きなんだなあというのがよく伝わります。さらに細かく拾っていくとアルバムテーマとの繋がりが見えてきて面白いです。

音については攻撃性がいつになく高いものの、展開が掴みやすくキャッチーで聴きやすい。もちろん慣れの問題もありますが、潜在的にあったポップスの側面がここに来て非常に分かりやすく楽曲に反映されたのだと思います。TKのソロ活動を経て改めて3人のバンドとしてのサウンドを追求した結果、前作の「シャンディ」、「this is is this?」、「eF」のようなアルバム全体に起伏を生むようなある種異端な曲はほぼなし。そのため、一曲ごとはシングル級の勢いを感じるが全体的には物足りなさを感じる部分も正直あります。このあたりは評価が難しいところで、ある意味タイトルがここに絡んでるとも解釈できますがどうなんでしょう。何はともあれ高い水準を保っていることを確信できた一枚。今後のメディア露出などの活動の展開も気になります。

★★★★★




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