中田裕二「BACK TO MELLOW」
中田裕二「BACK TO MELLOW」
熊本出身のシンガーソングライター、中田裕二の4th。
成熟する中田流AOR。
冒頭の「愛の摂理」から早速アダルトな装いの歌謡ポップスが繰り出され、官能的な情緒が迸っている。
「誘惑」は都会的で洒脱なアレンジのシティポップ。バンド時代に「幻惑」という曲も歌っていたが、似て非なるもの。ボーカルに余裕が感じられる。
「世界は手のうちに」は前作の「MIDNIGHT FLYER」を彷彿とさせる、ディスコ的でダンサブルな曲調が良い感じ。ちょいちょいワードが色っぽいのがこれまた良い。
「そのぬくもりの中で」は落ち着いたアコースティックアレンジで、シンプルな言葉で綴られる純愛ソング。
「未成熟」は、"少女"と"男"が雨の中別れを遂げるストーリー。女ではなく"少女"と書かれている点、そしてこのタイトルといい、内容的に危うさを孕んだ歌謡ロックが痺れる。
「髪を指で巻く女」は欲望剥き出しな野郎視点でファンキーに歌う。方向転換し過ぎだ(笑)
「PURPLE」はギターリフに始まるイントロから胸がつまる。"たれ込めた雲に抱かれた 無情の街で"というサビの表現が感傷に浸れる。
「ドア」は、何はなくとも次へ向かうんだという姿勢が感じられる、今作で最も爽快でポジティブな曲。なんとなくラストっぽい雰囲気。
「薄紅」は歌い出しから泣けるリード曲。奥行きのあるサウンドと繊細なボーカルで表される悲しげな春。
「サブウェイを乗り継いで」は昭和のラジオ放送のようなナレーションも入ったレトロでピースフルな東京ソング。東京メトロのCMに採用しよう。
「LOVERS SECRET」は王道AORな軽やかさが気持ち良いラスト。山下達郎っぽさが半端ないが、彼の曲としてはかなり新鮮に感じられた。
『元・椿屋四重奏』という肩書きはいい加減外してもいいような気がする裕二兄さんの4作目。今作の前にリリースしたカバーアルバムの影響もあるのかと思いますが、より歌唱にフィーチャーした構成のものが多いと感じました。オリジナル作品においてもボーカリストとしての成熟が着実に進んでいるようですね。AORを積極的に取り入れた分、ボーカルに余裕がある曲が増えた印象ですが、所々にバンド時代の艶のある歌謡成分を含めており、上手いこと新しいステージに進んでいるなと。彼の愛情の表現には様々なアプローチがあり、相手との距離感一つとっても全く異なる色合いの曲を生み出せる点は改めて見事だなと痛感しました。一曲ごとの質が高く、これまでの作品と比べても満足度が高い作品となりました。
★★★★☆
裕二兄さんに足りないのは身長だと思うの。
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コメント
hawaiibem様 こんばんは
椿屋四重奏は好きだったのですが
ソロはチェックしていませんでした。
すごくサマになっていますね。
ねっとりとした歌謡曲チックな歌い振りに
かつての面影がありましたが、
キラキラとしたキーボードや
ストリングスなどでかなりおしゃれになっていますね。
ロマンチズムは健在ですね。
椿屋四重奏は好きだったのですが
ソロはチェックしていませんでした。
すごくサマになっていますね。
ねっとりとした歌謡曲チックな歌い振りに
かつての面影がありましたが、
キラキラとしたキーボードや
ストリングスなどでかなりおしゃれになっていますね。
ロマンチズムは健在ですね。
URL | GAOHEWGII #-
2015/02/19 23:54 * edit *
Re: タイトルなし
>GAOHEWGIIさんソロでもコンスタントにアルバムを出していますが、個人的には今作が一番好きかもしれませんね。
アレンジのきめ細やかさも確かに進歩したように思います。
まだ聴かれていないようですが、バラエティ豊富な楽曲が揃っているので、是非チェックしてみて下さい。
URL | hawaiibem #-
2015/02/20 00:26 * edit *
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